子供のアトピー性皮膚炎、発症・悪化研究最前線 |
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- 3.アトピー性皮膚炎発症の実態とメカニズム【2】
- ■生後4カ月〜3歳までのアトピー性皮膚炎の発症には、
成長過程の免疫システムの変化とドライスキンが関わっている
- 乳幼児〜子どものアトピー有症率はおよそ10%前後ですが、厳密に見ると1歳6カ月児の調査では全国的にどのような調査の場合でもわずかですが有症率が低いという特徴があります(表3)。
これには、成長過程で免疫システムが変化することと関係があることがわかってきました。4カ月時に数値が高いのは、食物アレルギーは2歳までに発症率が高く、年長児は発症が少なくなります。
1歳6カ月ごろにアトピー性皮膚炎の頻度が少し低くなっているのは、この年齢による推移をみていると考えられます。
しかし、3歳時に再び有症率が上がるのは、3歳ぐらいから皮膚の乾燥が始まるので、ドライスキンやダニなどの外部因子によるアトピーが増えるからだと考えられます。
乳児期は母親からもらったホルモンのおかげで、皮脂が多く肌は潤っていますが、3歳頃には最も皮膚の乾燥が強くなるからです。
横浜市立大の研究チームが同一保健所で数年にわたって行っている調査は、アトピー有症率という数字だけを追うのではなく、誰が治って誰が新たに発症したかまでを追跡するものです。
例えばこの調査では、4カ月時と3歳時の有症率はともに約20%でしたが、このうち4カ月時にアトピーを発症していた子どもで3歳時点でも発症している子どもは36%で、64%の子供が改善していることがわかります。
この研究も発症のメカニズム解明に役立つことが期待されています。
- ■ 誕生月によっても発症率に違いがある
- 赤ちゃんの誕生月によるアトピーの発症率を調べたところ、秋生まれの子どもの発症率が比較的高いというデータがあります。
発症の原因はさまざまなので一概には言えませんが、子どもの成長過程と季節による環境変化が関係しているといわれます。
生後2〜3カ月で皮膚が乾燥し始めるころにちょうど冬を迎え、ドライスキンが進行しやすく、母親からの受動免疫(※1)のなくなる生後5カ月過ぎに春になり、花粉などの大量のアレルゲンに接触することが原因と考えられています。
もちろん、秋生まれだからといって必ずしもアトピーになるわけではありません。生まれ月に関わらず、このような成長過程を知り、皮膚の乾燥を防ぐスキンケアやアレルゲンを減らす環境整備が大切です。
(※1) 母親が免疫をもっているとその免疫体(抗体)が子供に移行し、子供は一定期間病気から免れます。これを母子免疫(受動免疫)と呼びます。
