かゆみのメカニズムとアトピー |
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- 2.「かゆみ」のメカニズム
- アトピー肌は普通の肌よりもかゆがりです。掻けば掻くほどかゆくなる、ちょっとした刺激でかゆみを感じる……それにはいくつかの理由があるのです。
- ■アトピー肌のかゆみの原因
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1. 免疫異常で炎症が起きやすい
かゆみの原因の一つはアレルギーによる炎症です。ハウスダスト、ダニ、花粉などが体内に侵入してくると、人間の体は免疫作用によって抗体を作ります。本来なら、これによって体内に入った異物は除去されるので、人間が生きていくためには必要な反応ですが、アレルギー体質の場合はこの作用に異常があり、真皮内に抗体が作られやすくなっているのです。このため、好酸球やリンパ球、肥満細胞などの炎症性細胞から、かゆみや炎症を起こす炎症性物質(炎症性サイトカイン)が発生しやすいのです。これらがアレルギー炎症を引き起こすため、アトピー肌ではアレルギー性のかゆみが起こりやすくなっているのです。
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2. 乾燥しやすく外部刺激に弱い
いわゆるバリア異常もかゆみの原因です。アトピー肌はセラミドを主成分とする角質細胞間脂質が少なく、水が外に蒸発しやすくなっているため、肌が乾燥しやすくなっています。乾燥した肌ではバリア機能は十分に発揮されません。そのためアトピー肌は外部刺激に弱く、外部刺激はかゆみの発生部位である表皮と真皮の境界まで簡単に到達してしまうのです。同時に、アレルゲンや細菌、ウィルスなどが進入しやすくなり、かゆみの炎症も起きやすくなっています。
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3. かゆみの神経線維が角層直下まで伸びている!
かゆみの刺激は主にC線維と呼ばれる細くて伝達速度の遅い神経を通って脊髄に伝わります。脊髄から大脳にその情報が伝わることで、人はかゆみを感じます。かゆみを感じるC線維の終末は健康な皮膚では、表皮と真皮の境界部分にあります(図A)。
ところが、アトピー肌の多くはかゆみを伝える神経線維が境界線を超え、角層直下の部分まで伸びています(図B)。皮膚が乾燥すると、表皮にあるケラチノサイトという細胞から出る神経成長因子(NGF)が増え、神経線維が伸びるためです。乾燥肌は肌のバリアーが破壊され、外部刺激を受けやすい状態になっているので、伸びた神経が過敏になり、かゆみを感じやすくなってしまっているのです。
正常な神経の状態にするためには、継続してスキンケアを行うことが必要です。


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4. その他のかゆみの因子
多因子性の疾患といわれるアトピーには、かゆみを引き起こす要因がたくさんあります。
ストレスは、かゆみの原因となるヒスタミンの血中量を増加させるため、かゆみの原因となります。
体温の上昇もかゆみの原因になります。これは、温度が高いほうが神経伝達の速度が速くなるためです。運動をしたり、お酒を飲んだり、熱いお風呂に入ったりするとかゆみが増すのはこのためです。寝る前にかゆくなるのは、体温が上がっているからです。
また、アトピー肌は、汗腺が詰まって汗が出にくくなっています。そのため汗による放熱作用が起きません。その結果体温が上がり、詰まった汗が皮下で刺激になってあせもやかゆみの原因になります。
