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体内時計の調整で"かゆみ"を軽減する

  • 体内時計の正体は?
  • 肥満細胞は自分の時計(時計遺伝子)を持っていて、スギ花粉などのアレルゲンが飛んできたときに、「今はお昼だな」「今は夜か」と時間から判断して活発になるか不活発でいるかを決めています。
    それにしても、そもそもなぜ細胞に時間が分かるのでしょう?
    その秘密は時計物質と呼ばれるたんぱく質にあります。細胞内で時計遺伝子は時計物質を産生しますが、それが細胞内いっぱいになると産生をやめます。そして溜まった時計物質が使われて空になると、再び産生が始まります。この周期が約24時間となっていることで細胞内で時計が形成されます。時計物質の量の変化が細胞の中で時間として表現されるので〝砂時計〞の砂の増減のようなイメージです。
  • 肥満細胞の時計をチューニングする
  • 時計遺伝子の一つに、ピリオド(Period)と名づけられた遺伝子があります。ピリオド遺伝子には3種類あるのですが、その一つにピリオド2(Per2)があります。1日の時間帯で肥満細胞の中のPer2たんぱく質の量の変化を調べると、日中の活動期は多く、夜間には少なくなります。Per2たんぱく質の量が、肥満細胞の時計を動かしていたのです。つまり肥満細胞はPer2たんぱく質の量を見て昼と夜を判断します(多いと日中、少ないと夜間)。ということは、このたんぱく質の量を調整することで、肥満細胞の時計をチューニングすることができます。
    ここで研究チームが考えたアイデア
  • は、アレルギー症状が強くなる時 間帯(夜間)に、時計遺伝子をずら してアレルギー症状が弱い時間帯(日 中)に変えてしまえば、夜間でも症 状が軽くて済むのではないかという ことです。アレルギー症状が弱い日 中の時間帯にはPer2たんぱく質 の量が多いわけだから、その量を減 らさないようにすればいいわけです。
  • 体内時計をずらして 症状を軽減する
  • Per2たんぱく質の分解を防ぐことができる薬があることは、その頃すでに分かっていました。Per2たんぱく質はカゼインキナーゼという酵素に分解されるので、カゼインキナーゼの活性を落とすカゼインキナーゼ阻害剤を使えば肥満細胞の時計を動かすことができます。
    さっそくマウスの実験を試みました。カゼインキナーゼ阻害剤を投与したマウスに、様々な時間帯にアレルゲンを与え、アレルギー症状が強くなるかどうかを調べてみたのです。その結果、時間帯が変わっても症状の強さに変化は起きませんでした。本来は症状が強く出るはずの時間帯(マウスの場合は昼間)でも、症状は軽いままだったのです。
    研究チームは、この研究成果を応用すれば、常にアレルギーが弱い状態で治療を進められるという、今までにない治療法が可能になると考えています。そのためにクリアすべき問題も残っています。体内時計を人為的にずらすわけだから、全身の体内時計が狂ってしまうと不眠症などの副作用も考えられます。
    中尾教授によれば、飲み薬など全身に作用するものではなく、塗り薬や点鼻薬のような局所的に働きかけるような薬を開発することで、副作用を抑えながらアレルギー症状を軽くできる可能性があるそうです。この研究のさらなる進展に期待したいところです。


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